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【検証】自作のFIRE計画は、AIの追及に耐えられるのか?

アイキャッチ

この記事で伝えたいこと

自分で作ったライフプラン、本当に大丈夫…? そんな疑問から、生成AIにレビューを依頼。AIとの対話を通じて、計画の強度を証明し、さらに磨き上げるためのヒントをお伝えします。

こんにちは、金育SEのまさ(@kinikuse)です。

皆さんは、ご自身のライフプランシミュレーションを作ったことがありますか?

私も「早期リタイア(FIRE)」と「子供の教育費」という大きな目標を両立させるべく、自分なりに詳細なシミュレーションを作っています。何度も見直したし、これなら大丈夫だろう、と。

…でも、本当に?考慮漏れはない?

そんな思考の壁打ち相手として、生成AIの「Gemini 3 Pro Preview」にライフプランをレビューしてもらうことにしました。

題して、『AIによるFIRE計画・公開検証』。

この記事では、私が実際にAIに送ったプロンプトも交えながら、その興味深いやり取りの様子をお届けします。

この記事で分かること

  • AIがライフプランのどこをチェックするのか
  • シミュレーションに潜む「見えないリスク」の論点
  • AIとの対話で計画に自信を深めるプロセス
  • AIにライフプランをレビューしてもらうための具体的なプロンプト例

注意点

「年収」「生活費」「各種タイミング」などの具体的な数値は意図的に隠しています。ご了承ください。

まさのプロンプトはGeminiに渡した原文のまま掲載してます。 一方で、Geminiの返答は長すぎるので要約してます。

Geminiとの対話

参考資料

質問1:ライフプラン診断をお願いします

まさ

あなたはプロのFPです。

ライフプランシミュレーションを実施しました。添付したPDFをもとに、プロの視点で考慮漏れがないかレビューしてください。

【算定の前提】

  • 4人家族(夫婦、子ども2人)
  • 40代で早期リタイア(FIRE)し、その後は趣味程度の仕事に切り替える
  • 子どもは2人とも、中高大と私立に進学し、大学院まで行く可能性を想定
  • 趣味のスキーを続ける想定

    【補足情報】

  • 変動率(金利・物価上昇率)の設定は下記

    • 教育費インフレ率: 3%
    • 生活費インフレ率: 1%
    • 預金金利: 4%

※ プロンプトには記載していませんが、無料で利用できるFinancial Teacher System[^1]から出力されたPDFを添付しました

参考資料

Geminiの回答1:計画破綻リスクが高い

Gemini

プロのFPとしてレビューした結果、「前提条件が楽観的すぎて計画破綻のリスクが高い」という懸念が見つかりました。特に、以下の5つの点が問題です。

  1. 現預金の金利4%は非現実的

    現在の経済状況では、リスクなしで年4%の金利を得るのは不可能です。この「架空の収入」がなければ資産寿命は劇的に短くなります。

  2. FIREと教育費のピークが重なっている

    収入が激減するFIRE直後から年間収支が数百万の赤字に転落し、資産の取り崩し期間が長すぎます。

  3. 大学院費用が考慮されていない

    シミュレーションでは大学4年で教育費が終了しており、大学院進学(2人分で400〜600万円)が考慮漏れです。

  4. 住宅計画にリスクがある

    高齢・無職での賃貸契約は厳しく、子供の独立後に希望の家が買えるかどうかは、インフレを考えると疑問です。

  5. スキー費用が見積もり不足の可能性

    家族4人の「ガチ勢」であれば、今の想定金額では足りなくなる可能性があります。

【改善提案】

  • 資産運用は、生活防衛資金とリスク資産(投資信託など)に分け、より現実的な利回りで再計算すべき。
  • FIRE後の収入を増やすか、リタイアを遅らせるべき。
  • 大学院費用を追加計上すべき。
  • 支出に優先順位をつけるべき。

質問2:誤解があります

まさ

いくつか誤解があるので説明します。

  1. 現預金の4%設定は意図的
    資産運用として、金利0.1%の生活防衛資金を常に確保しています。それ以外の金額はすべて全世界株式や債券に分散投資して、年利4%程度の目標値になるポートフォリオで運用します。

  2. FIREと教育費ピークの関係
    まず、本シミュレーションの前提となる教育費インフレ率は3%です。20年後の大学費用はかなり高額になる想定を立てています。前述のようにキャッシュショートしているわけではなく、資産全体としては黒字なので、確定拠出年金などの早期取り崩しするなどで対応できると思います。

  3. 大学院費用は計上済みです。添付資料の17ページ見て

  4. 住宅購入は中古物件のリフォーム費用も見越してかなり多めに●万円を計上している

  5. スキー費用は十分な金額です。あなたよりもスキー費用には詳しいと思うよ

Geminiの回答2:計画の実現性は高いが、1点だけ致命的な勘違いの可能性

Gemini

ご指摘ありがとうございます。前提を再認識した結果、「計画の実現性は高い」と評価を改めます。生活費のコントロール力や教育費のインフレ設定など、素晴らしい点が多く見られます。

ただし、1点だけ「50代後半の資金ショート(流動性リスク)対策」に法的な懸念があります。

  • ⚠️ 確定拠出年金(iDeCo/企業型DC)は原則60歳まで引き出せない 「確定拠出年金を早期取り崩しする」とのお考えですが、これは法律上できません。50代後半で現金が尽きた際に、「資産はあるのに引き出せない(黒字倒産)」状態に陥るリスクがあります。
  • ⚠️ シーケンス・オブ・リターン・リスク 資産取り崩し期に株価が暴落すると、「安値で大量に売却」せざるを得なくなり、資産寿命が想定より大幅に縮む危険性があります。

【改善提案】

  • 50代の資金繰りは、確定拠出年金以外の資産(NISAや特定口座)を取り崩す計画に修正すべき。
  • 教育費など、大きな支出の数年前には、必要額を現金化して暴落リスクに備える「出口戦略」を実行すべき。

質問3:対策済みです

まさ

1.言い方が悪かった。まずはNISAや特定口座を取り崩す。確定拠出年金の取り崩しは【61歳で500万一括受け取り、残りを20年分割】というシミュレーションに変更することで資金ショートを回避できた

2.暴落シナリオは考慮済み。子供の教育費として800万/人を10歳になったタイミングで現金化して確保する計画。暴落が起きても大学には行けるし、その場合は親の家に関する支出タイミングを遅らせて現金化による資産減を回避見込み

Geminiの回答3:お見事です。このプランは「承認」します

Gemini

脱帽いたしました。2大懸念であった「流動性リスク」と「シーケンス・オブ・リターン・リスク」への対策が論理的に解決されています。プロのFPとして「このプランは承認(Goサイン)」と判断します。

最後に、より盤石にするための微調整レベルの確認事項を2点だけ補足します。

  • 1. 教育費「現金化」時のインフレ負けに注意

    「10歳で800万円を現金化」する戦略ですが、教育費インフレ率3%を考慮すると、大学入学までの8年間でその価値は目減りします(800万円→実質約630万円)。インフレ調整後の金額を確保するか、現金化後も国債などで運用することを推奨します。

  • 2. FIRE後のiDeCo加入継続について

    61歳で500万円を非課税で受け取るには、12.5年以上の加入期間が必要です。FIRE後もiDeCoに(少額でも)加入し続けることで、退職所得控除の枠を増やせます。

【結論】

当初の懸念はすべて計算された上での設定であり、リスク対策も二重三重に講じられていることが分かりました。非常に完成度の高いFIRE計画です。自信を持って進めてください。

最終回答へのアンサーと今後のアクション

Geminiから「承認(Goサイン)」をもらった私の計画ですが、最後に提示された2点の「微調整レベルの確認事項」についても、私の考えを整理しておきます。

1. 教育費の「インフレ負け」について

Geminiの指摘: 「10歳で800万円を現金化」すると、教育費インフレ3%によって大学入学までに価値が目減りする。

これについては、問題ありません。

というのも、そもそも現金化(リスク資産からの待避)した後の資金は、個人向け国債(変動10年) で運用することを想定しているためです。

個人向け国債は最低金利が保証(0.05%)されているうえ、金利が市場に連動して上昇するため、インフレヘッジとして一定の効果が期待できます。

もちろん、教育費のインフレ率が国債の金利を上回る可能性の方が高いですが、進学先がどうなるかにも依存します。定期的に教育費のインフレ動向をウォッチし、必要であればサイドFIREの収入を増やすなど、計画を柔軟に修正していくつもりです。

2. FIRE後のiDeCo加入継続について

Geminiの指摘: FIRE後もiDeCoに加入し続けると、退職所得控除の枠が増えるので税制上有利になる。

これまでずっと正社員で働いてきており、退職所得一時金500万円の非課税枠を得るための加入期間12.5年以上は、すでにクリア済みです。

FIRE後は、現在加入している企業型DC(確定拠出年金)の資産をiDeCoに移換し、60歳まで着実に運用を続けていく計画です。

退職所得控除の活用法については、FIRE後の働き方の最終的な形と合わせて、今後じっくり検討していくつもりです。

まとめ:AIとの対話で、計画は「確信」に変わる

今回のAIとの対話は、「AIに評価される」というより「プランの強度を証明する公開検証」のようでした。

AIは、答えを教えてくれる魔法の杖ではありません。 その代わり、自分の考えをぶつけることで、思考の矛盾や抜け漏れをロジックだけで映し出してくれる「思考の鏡」です。

FIREを目指す人はみんな自分自身で「ライフプランシミュレーション」を作ったことがあると思います。 ただし、自分で作ったその計画に、どうしても「こうであってほしい」という希望的観測を混ぜ込んでしまいます。AIは、そこに人間関係のような忖度なく、淡々と矛盾点を指摘してくれます。

その指摘に対して一つ一つ論理的に応答していくプロセスは、まさに自分の計画の弱点を潰し、強度に自信を持っていくプロセスそのものでした。

ライフプランニングとは、一度作って安心するものではなく、こうして第三者の視点を借りながら何度も見直し、磨き上げていく「動的なプロセス」なのだと、改めて気づかされました。

あなたのライフプラン、一度AIに壁打ち相手になってもらってはいかがでしょうか? 思わぬ論点が見つかり、それを乗り越えた先には、計画への大きな自信が待っているかもしれませんよ。


最後までお読みいただきありがとうございます。
良い機会なので、私と一緒にお金の勉強を始めませんか。
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